2014年9月2日火曜日

世界遺産「白川郷」めざして


30日の土曜日、日曜大工をしていると携帯が鳴った。
悪魔の囁き「古城公園から白川郷まで走らんけ」
耳鳴りとともに意識が唸り、身体中が熱を帯びる。

全長76キロ 156号線を走り 世界遺産「白川郷」4:30発の最終バスで高岡までカエル。
制限時間は12時間。

AM4:00に歩道を走る この世の孤独を象徴するもの、それは夜の歩道
白と赤の流れるライト 黄色の点滅 塗装と戦う錆 政治家のポスター
下を見て走る すぐ前でやつのシューズが動いている



雨上がりの街は霞んでる
夜明けに気づいたシグナルだけが、アスファルトに反射して 境界に不連続な明度の一線を刻む


この場所だ 彼はここに立っていた 少し斜めになって
彼は立っていた 夢だったのだろうか
本当に・・・・・ その光景だけが稲妻のように蘇る



フラワーランドとなみ 2時間15分走って、まだここ 



やつは走る 人間のように 永遠にはしる いつまでも 理由もなく
愛情もなく 孤独もなく 何のためでもなく 何も望まずに


跳んでるカエルと跳べないカエル
アルコールが流れる脚とアルコールが流れていない脚
逝ってしまったやつと待っていたやつ
比べてごらん 似ているよ


やつが調子良いのか 自分が調子悪いのか 今、無理したら後が怖い
道の駅は、まだか!


ここが最後のコンビニ 食料購入


やつの姿はない 時間に余裕が無いと分かっているが 足は動いてくれない
写真を撮って休憩をとる


初秋という境遇は、すべての生き物が帰ってくる安らぎの湖の底に沈んでいる 澄み切った大気が生命を眠らせ殺してしまうほど優しい




無数に分裂した樹々の枝先は、自身の無秩序な将来を予感して震えてる


元気なやつにいう
「ひとりで白川郷まで行ってくれ 俺は甲斐性なしだから下梨か上梨で、最終バスに乗る」
「それじゃ 下梨から城端へ行こう そこから電車に乗るから何時になってもいい」
「・・・・・・・・・・・・・・」



呼吸が喉の中途にひっかかる。心臓が足掻く。汗が吹き出しオレンジのシャツを濡らす。



橋を渡りきると そこには
そこには 長い急な坂がはるか遠くでぐしゃりと歪んだ。

和紙の里まで900mの立て札
あまりにも遅いので やつは迎えに戻ってきた。


コーラを飲み一息つく。昼食もとり 元気になったと思ったのだが・・・

ひとり立山マラニックしてる「またえもん」に電話する。
「今どこ?」
「立山高原ホテル前」
順調にいっているようだ。こちらは雲行き怪しい。



下りになって、調子が上がるはず
だが、ザックが暴れ 肩に埋め込んだプレートにすれる。
左膝もおかしい スピードあげると嫌な感触がある。
故障は怖い くびきのが控えている。

やつに「ギブ・アップ」を告げる。
今回のゴール地点は「上梨」となった。


羊の皮を被った狼
2000GT-R


今頃 またえもんは「立山山頂」かな



このまま、引き下がるわけにはいかない!

リベンジ案
1.午前0時スタート 白川郷16時

2.朝1番のバスで白川郷に行き 逆走コース

2014年9月1日月曜日

マタエモン
















若いころ、五箇山にドライブに行ったとき、民宿の看板が目に入った。それは又衛門と書かれた看板だった。又衛門は鍵屋の辻の決闘での活躍で名高かった。だが若いころはそんな事は知る由もない。ただ又衛門の名が脳裏に刻み込まれていったのだ。

自分がトレランに興味持ち始めた時に、突然私は又衛門に夢中になりはじめた。それは自分の走り方に疑問を持ったからだ。このままで良いのか…そう思うと居てもたってもいられなくなり、マタエモン・マラニックに参加した。マタエモンを知る為にその周辺にいた人達とも走り始め、それが私が変態ランに没頭させるきっかけとなっていった。

歴史は人を生み、人が歴史を作っていく。だが決して一握りの人間が歴史を刻んでいったのではない。その時その時の時代の人の欲望が、時代を守ったり、変革する人間を求め、創り出していったのだと思っているし、これからもそうなのだと信じて疑わない。高橋尚子や野尻あずさは特別なのだろうけど、彼女らを特別たらしめたのは、やはり現代の人間の欲望に違いないからである。換言すれば今生きている人達が彼女らを創り出したのだ。

若さは大いなる武器だ。だが、その武器を自分は使い切れなかった後悔にずっと苛まれている。だから未だにこうして何かに向かって走り続けないと気がすまないのかもしれない。

志を高く持って、全力で走る。そんな生き方に憧れる。そしてそれは到底出来ない事である事も分かっている。

私を変態ランの世界に導いた民宿「又衛門」は、健在だった。私の記憶は生きていた。

クルシ~イ