30日の土曜日、日曜大工をしていると携帯が鳴った。
悪魔の囁き「古城公園から白川郷まで走らんけ」
耳鳴りとともに意識が唸り、身体中が熱を帯びる。
全長76キロ 156号線を走り 世界遺産「白川郷」4:30発の最終バスで高岡までカエル。
制限時間は12時間。
AM4:00に歩道を走る この世の孤独を象徴するもの、それは夜の歩道
白と赤の流れるライト 黄色の点滅 塗装と戦う錆 政治家のポスター
下を見て走る すぐ前でやつのシューズが動いている
雨上がりの街は霞んでる
夜明けに気づいたシグナルだけが、アスファルトに反射して 境界に不連続な明度の一線を刻む
この場所だ 彼はここに立っていた 少し斜めになって
彼は立っていた 夢だったのだろうか
本当に・・・・・ その光景だけが稲妻のように蘇る
フラワーランドとなみ 2時間15分走って、まだここ
やつは走る 人間のように 永遠にはしる いつまでも 理由もなく
愛情もなく 孤独もなく 何のためでもなく 何も望まずに
跳んでるカエルと跳べないカエル
アルコールが流れる脚とアルコールが流れていない脚
逝ってしまったやつと待っていたやつ
比べてごらん 似ているよ
やつが調子良いのか 自分が調子悪いのか 今、無理したら後が怖い
道の駅は、まだか!
ここが最後のコンビニ 食料購入
やつの姿はない 時間に余裕が無いと分かっているが 足は動いてくれない
写真を撮って休憩をとる
初秋という境遇は、すべての生き物が帰ってくる安らぎの湖の底に沈んでいる 澄み切った大気が生命を眠らせ殺してしまうほど優しい
無数に分裂した樹々の枝先は、自身の無秩序な将来を予感して震えてる
元気なやつにいう
「ひとりで白川郷まで行ってくれ 俺は甲斐性なしだから下梨か上梨で、最終バスに乗る」
「それじゃ 下梨から城端へ行こう そこから電車に乗るから何時になってもいい」
「・・・・・・・・・・・・・・」
呼吸が喉の中途にひっかかる。心臓が足掻く。汗が吹き出しオレンジのシャツを濡らす。
橋を渡りきると そこには
そこには 長い急な坂がはるか遠くでぐしゃりと歪んだ。
和紙の里まで900mの立て札
あまりにも遅いので やつは迎えに戻ってきた。
コーラを飲み一息つく。昼食もとり 元気になったと思ったのだが・・・
ひとり立山マラニックしてる「またえもん」に電話する。
「今どこ?」
「立山高原ホテル前」
順調にいっているようだ。こちらは雲行き怪しい。
下りになって、調子が上がるはず
だが、ザックが暴れ 肩に埋め込んだプレートにすれる。
左膝もおかしい スピードあげると嫌な感触がある。
故障は怖い くびきのが控えている。
やつに「ギブ・アップ」を告げる。
今回のゴール地点は「上梨」となった。
羊の皮を被った狼
2000GT-R
今頃 またえもんは「立山山頂」かな
このまま、引き下がるわけにはいかない!
リベンジ案
1.午前0時スタート 白川郷16時
2.朝1番のバスで白川郷に行き 逆走コース