2014年8月5日火曜日

富士登山

八合目についた時、ザックの重みは頭のてっぺんにまでのしかかっているような錯覚に陥った。お、重い…。
山小屋の前の平地をよたよたと歩きながら、登山道の一段目にさしかかった時異様な頭痛が私を襲う。

 なんとか八合目と九合目の中間点まで進んだ所で、やめよう、腰掛けよう、も、もう限界じゃ…。こんな事しても何にもならんぞ、でもあと少しで九合目だ、せめてそこまで登ろう。 身体が重~い。

重さのあまり気力が擦り切れるような気がする。息が切れそうな、窒息しそうな胸の苦しさを覚える、も、もうあかん、でも勢いで 九合目まで登り切った。
苦しい。 

ぜーぜー、はーはー、最後の本当に最後の力を振り絞って頂上まで行ってみよう。一旦下に座ったら、二度と立てそうにない。 痩せた私の少ない筋肉は引きちぎれんばかりだった。

ぜぇ~、ぜぇ~、ぜぇ~、頭が、酸素を求めてると分かった。身体中がけだるくなっていた。足はもう上がらない。
頂上まで登り切った時、これはもうマラニックではなくなっていた。

 意識が半分薄れていくような頭の中で、これは、自分への挑戦だ!と言い聞かせていた。頂上がもう、目の前にある。あと十数メートル上がれば、目的地に辿りつくのだ。 この時のわたしは、殆ど登山家の境地に達していた。痩せた身体から、意地と気力だけの力を出し、一歩一歩登りつめていった。もう、息も枯れて出ない。 身体の水分は全部蒸発したかのようだった。筋肉は延びきり、頭はマヒし、廻りがソフトフォーカスがかかったように見えた。

 はーはーはーはーはーはー 十歩登っては はーはーはーはーはーはー 

 私を追い越していった女性、戻ってきて「大丈夫ですか?その岩に腰掛けて、しばらく休めば楽になりますよ」

 この後も、二人の女性から声を掛けられた。「大丈夫ですか?」

 「もうダメ 死にそう」男62才、まだまだ捨てたもんじゃない

 最後の山小屋に登り詰めた時、私の疲れ切った筋肉は歓喜の震えをおこした。男62才、まだまだ捨てたもんじゃない、私は自分で自分を賛えていた。 ザックを下ろそうした時、まだ上がある。なんでやねん。

 マップを見た私は気が狂いそうになった。ここは「 九合五勺」声が出なかった。涙が出た。心の中で叫んだ。

 ば、ばかやろぉぉぉぉぉおおおお~~!ち、ちきしょおー!七、八、九合目の次は十合目だろがよぉぉぉおおお~~!

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